焼き鳥を棄てた男

焼き鳥──麻雀用語でその対局中一度も和了していない者を指し、終局まで焼き鳥のままの場合一定の点数を他家に支払うというローカルルールも存在する。そのため南場は特に我先にとポンチーの仕掛けを多用し必死に和了へ向かう傾向が強い。

 2020年8月某日、男は太陽が容赦なく全身を焦がす猛暑の中新宿駅東口の前でただ呆然と立っていた。

 彼は今日、人生における焼き鳥を棄てに来た。


 それはある者は生涯捨て去る事無く人生を終えることもあれ、またある者は小中学生の段階で既に放棄してしまうものもいるらしい。

 彼は待っていた。
 その急所のカン7sを鳴かせてくれる人を。

彼は待っていた。

「優香@社長令嬢の24歳☪︎ *.」
と名乗るアカウントの女性を。


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まぁなんとも胡散臭い文章である。
我ながら怪しさ満点の文が書けたものだ。

それでその人とDMで詳しい交渉をして会うことに。

 初回のみ2万円を置いて欲しいと頼まれた。これはお金の問題ではなくあくまでも信用のためで、次会ってくれた時は5万円にして返してくれるらしい。よくある話だ。
 私はアルバイト等で貯めた現金約27000円を財布に詰め込み、近所のマツモトキヨシで買い込んだ精力剤を用法用量を守らずに徐ろに口へ放り込む。
 そしてkoekoeの催眠焦らし音声をBGMにして午前7時の総武本線へと乗り込んだ。
 3時間を掛けての長距離移動だ。
 じわじわと精力剤「そりすぎ☆マッチョ」と「極太超兄貴」の効果も現れて来たのか、長ズボンの中でモノがぞくぞくとして身体が熱く火照って来る。普段からこんなこともあろうかと保存しておいた秘蔵の薄い本の画像データ約2万枚を一つ一つ舐め回すように眺めているとすぐ新宿駅へと辿り着いた。
 午前10時24分。新宿駅東口の前で立ち尽くす。期待に胸と股間を熱くして周囲の人を見回す。

────来ない。

午前11時を回ったが一向に来る気配がない。本来の待ち合わせ時刻を30分以上オーバーした。

 さらにもう1時間猛暑の中を間抜けのように突っ立った後諦めた。

 しかしそれでも挫けない。他の予め目を付けていたアカウントにDMを飛ばす。
 「諦める」という言葉は本来「明らかに見極める」という意味である。かの有名なbiim兄貴もメガトンコインをした後はすぐさま的確な判断でリカバリーを行い被害を最小限に食い止めている。大事なのは瞬発力だ。

 山手線を一駅乗って新大久保へ。コンビニでおにぎりとガムを買ってから、駅から近いマクドナルドの前で待ち合わせする。口臭のケアはかなり大事だ。
 これでもかと言うほどミントの香りを纏わせてから日本語より韓国語の方が多く聞こえてくる路地にて待機する。

 5分ほどすると茶髪の女性が現れた。

背は私より10cmほど低く、全体的に丸みが強くややぽっちゃりとしている。少なくともプロフィールの写真とは似ても似つかない。

 まぁしかしそれでも高熱と興奮で頭がまともに回っていない私は気にせず受け入れた。

「こういうの初めてなの?」
そう彼女は尋ねる。

『はい……色々な人を頼りましたが詐欺ばっかりで……』
しどろもどろになりながらも早口で答える。

 1分ほどでホテル「南斗五車星」に到着した。ここは新大久保近辺のホテルの中でも格安だそうだ。2時間2600円で支払う。

 「今日はどこから来たの?」

 『はい、えっと……千葉の方からです……3時間掛けて来ました…………』

「へーそうなんだ、大変だったね」

などと軽く雑談をしながら二人きりでエレベーターに乗る。
 部屋に入り、スマホの充電器をセットした後現金2万円を支払う。衣服を全て脱いで丁寧に畳みテーブルに置いてからシャワーを浴びた。

 私の前で彼女は恥ずかしがることなく服を脱いでいき、数分でシャワーを浴びてきた。

 今自分がしている行為への背徳感と緊張でモノは既に先走った汗を垂らしている。ベッドに誘われ、仰向けに横になるとバスタオルも付けないで一糸纏わぬまま彼女は私の膝の上に乗っかって顔を埋めてきた────

 根元から先端まで、血管浮き立つ程に怒張したモノを丹念に適度に乾いたザラついた舌で舐られていく。舌先で皺を伸ばすように袋から珠にかけてを擽る。硬く凝った乳首に舌が這わされたまま真綿を掴むように軽く指で握られ扱かれる。深いカリの段差をBPM220で咥えこんだ唇が往復する。開始10分足らずで果てる0,02歩手前まで詰め寄られた。

 「じゃあ……そろそろ、いいかな?」
彼女はそう言って私の腰の上で跨るとゆっくりと腰を落としていく。

 『は、はい…………』

 大きく脚を開き、透明なゴム越しに暴力的な屹立を示すモノを、静かに、じっくりと呑み込んでいった。

────十数秒、動かず深く挿入されたままで膣壁の感覚を、貞操を棄てた余韻を味わった。
 上体を持ち上げ口吸いをし、舌を突き出して彼女の歯茎や口内を感じ取る。
 彼女の動きに合わせて激しく下から腰を突き動かす。荒い吐息と彼女の嬌声が8畳もないであろう狭い部屋に反響する。

5分ほどそうした後、

『あの……上から、してみたいです…………』
と強ばった声で頼む。彼女は1度モノを引き抜きベッドに先程まで私がしていたように寝転がる。
上から覆いかぶさり再び激しくキスをしながら挿入へ。

 動画で見たように最初はゆっくりと、次第に早く腰を打ち付ける。全身でのしかかり体重を彼女に押し付けるようにしてやや苦い彼女の乳首に吸い付き舌で転がすようにして舐りながら…………

 20分近くしていただろうか、彼女の柔らかな胸を両手で鷲掴みにするように揉みしだいていると俄に昇りつめるような感覚に襲われた。

 「中でぴくぴくしてるね…………出していいんだよ…………?」
と彼女が耳元で囁いて来る。

 私は何も言わず、ただ腰を動かすペースを早めていき、
────彼女の奥底にまでモノを押し付けたままゆっくりと、1分間以上零れて溢れ出すような射精を続けた。

 「ん……ぅん…………出てる…………」
と彼女は後ろに手を回して優しく頭を撫でてくれた。

 そして放心状態のまま先端に液の溜まったゴムを外され、彼女の後にシャワーを浴びてから再び服を着る。

なんか言われるがままに3千円ほど追加で支払ってしまった。まだホテルの予約時間の半分も経っていない。

 次に会う約束も出来ずに足早に彼女は去っていった。何とも言えぬ虚脱感に襲われて軽く眠った後、ホテルのチェックアウトを済ませた。

────その足で、私はオナホールを買い帰路に着いたのだった。